メンタルヘルス休職:人事がすべきこと

多くの企業の就業規則に、おおむね次のような一文があります。「休職期間が満了しても復職できない場合は、自然退職とする」。

ほとんどの人事担当者は、読み流しているはずです。けれど、メンタルヘルス休職でうまくいかないことの多くは、復職手続きのどの項目よりも、この一文から生まれています。

休職は、法律で定められた権利ではありません。会社の規則がつくる制度であり、その規則が期限を決めています。残りがあと何か月かは、関係者全員が分かっています。誰よりも本人が。期限が近づくと、本人は準備が整う前に戻ろうとし、主治医は診断書を求められ、人事はそれを受け入れるよう迫られます。こうして復職は、本人の回復ではなく、カレンダーに合わせて進んでいきます。

メンタルヘルス不調による休職は、珍しいことではありません。厚生労働省の調査では、過去1年間にメンタルヘルス不調で1か月以上休業した、または退職した社員がいた事業所は、およそ8企業のうち、1企業で発生しています。

多くの企業は、休職の始まりにはそれなりにうまく対応しています。問題は復職です。厚生労働省の研究班によると、うつ病で休職した社員のほぼ半数が、5年以内に再び休職していました。その多くは、復職から2年以内です。しかも2回目の休職は、1回目より長くなる傾向があります。

T復職が早すぎる。
主治医は、患者に日常生活へ戻ってほしいと考えます。期限が迫っていれば、「復職可」の診断書を書く医師は少なくありません。ただ、その診断書が答えているのは、日常生活を送れるほど安定しているか、という問いだけです。この仕事、この通勤、この業務量に耐えられるかどうかには答えていません。それは別の判断であり、産業医と会社が下すものです。

原因が残っている。
戻った先に、同じ難しい顧客、同じ仕事の山、同じ目標が待っていれば、復職プランは形だけのものになります。休職につながった状況は、何も変わっていないからです。

支援が早く終わる。
最初の数週間は面談がありますが、本人が元気そうに見えると、次第に途切れていきます。しかし、最もリスクが高い期間は約2年続きます。多くの企業が注意を向けなくなった、ずっと後までです。

上司が変わる。
4月の人事異動で来た新しい上司は、復職プランがあることを知らされていません。残業が少しずつ戻っても、誰も気づきません。誰も見ていないからです。

休職前:管理職が気づき、つなげられるようにする

たいていの管理職は、兆候に気づいています。夜遅くに送られてくるメールが増える。報告が短くなる。会議を忘れる。残業は増えているのに、成果は落ちている。足りないのは、そのあと何をすればいいかという感覚です。管理職の役割は、気づいて、産業医や人事、相談窓口につなぐこと。診断することではありません。

実際に使える一言を用意しておきます。たとえば「最近ちょっと無理しているように見えるから、一度、産業医と話してみてもらえないかな。様子を聞くだけだから」。言葉を持っている管理職は、実際に声をかける可能性がずっと高くなります。

2028年4月からは、従業員50人未満の事業場にもストレスチェックが義務化されます。早い段階で問題に気づくきっかけになります。ただし、誰かが結果をもとに動けば、の話です。

休職の開始時

最初の1週間が、その後の流れを決めます。休職の規定と休職期間の上限、そして給与が止まることが多いため、健康保険の傷病手当金について説明します。傷病手当金の担当者は連絡窓口は一人に決めます。多くの場合は人事の担当者です。業務の引き継ぎはチームで行い、仕事の件で本人に連絡する人がいないようにします。取引先の件で上司が善意から送るメッセージは、最初の週にはまさに逆効果です。

休職中

連絡は定期的に、軽く、一人から。月1回程度が一般的です。調子はどうか、会社から必要なことはないかを尋ねます。いつ戻れるかは聞きません。

医療に関する情報は、本人の同意を得たうえで産業医を通し、職場が知るべきことだけに絞って受け取ります。人事に必要なのは病歴ではなく、復職が近づいているかどうかです。回復は一直線には進みません。ひと月調子が良くても悪くても、それだけではほとんど意味を持ちません。

復職できるかどうかの判断

「復職可」の診断書は、その日から復職の対象になる、という意味として扱います。その日の朝から出社する、という意味ではありません。最終的に判断するのは会社です。産業医が本人と面談し、意見書を出したうえで決めます。

役に立つシンプルな方法が、いくつかあります。数週間つけてもらう生活記録表を見れば、決まった時間に起き、一日を過ごせているかが分かります。厚生労働省の職場復帰支援の手引きにもある試し出勤は、正式な復職の前に、通勤と職場を試す機会になります。うつ病からの職場復帰を専門に支援する医療機関のリワークプログラムは、再休職を防ぐうえで確かな実績がありますが、勧めている人事部門はごくわずかです。

復職後の数か月

一般的なのは、元の職場に戻り、業務量を通常の7〜8割程度に抑え、最初の数か月は残業も出張もなしにするやり方です。チームには、本人が了承した範囲のことだけを伝えます。

そのうえで、原因に手をつけます。顧客なのか、業務量なのか、目標なのか、指揮命令系統なのか。何を変えるかを、誰かが決めなければなりません。何も変わらなければ、結果も同じになると考えておくべきです。

復職後の2年間

フォローアップは、つきっきりである必要はありません。ただし、続ける必要があります。効果的なのは、見直しの時期をあらかじめ決めておくことです。復職から1か月、3か月、6か月、12か月の時点で、人事と、可能であれば産業医も交えて短い面談を行い、2年目は軽めの確認にします。確認する内容は毎回同じ。勤務時間の制限が守られているか、業務量がいつの間にか戻っていないか、です。日程は、復職したその日にカレンダーに入れておきます。すべてが順調に見えるときでも、面談が行われるようにするためです。

上司が変わるときは、復職プランを引き継ぐ必要があります。これは異動の手続きに組み込んでおきます。放っておけば、引き継がれることはありません。

  • 産業医は診断書を見るだけでなく、本人と面談し、意見書を出しているか
  • 本人は少なくとも数週間、安定した生活リズムを保てているか
  • 休職につながった業務について、具体的に何が変わったのか
  • 勤務時間、残業、出張の制限はどうなっていて、いつ見直すのか
  • 誰が、どのくらいの頻度で、いつまで様子を確認するのか
  • 上司が変わった場合、誰がプランを引き継ぐのか

答えがあいまいなら、まだ復職の準備は整っていません。休職は、本人が戻った日に終わります。リスクは、そこでは終わりません。

メンタルヘルス休職:人事がすべきこと

多くの企業の就業規則に、おおむね次のような一文があります。「休職期間が満了しても復職できない場合は、自然退職とする」。

ほとんどの人事担当者は、読み流しているはずです。けれど、メンタルヘルス休職でうまくいかないことの多くは、復職手続きのどの項目よりも、この一文から生まれています。

休職は、法律で定められた権利ではありません。会社の規則がつくる制度であり、その規則が期限を決めています。残りがあと何か月かは、関係者全員が分かっています。誰よりも本人が。期限が近づくと、本人は準備が整う前に戻ろうとし、主治医は診断書を求められ、人事はそれを受け入れるよう迫られます。こうして復職は、本人の回復ではなく、カレンダーに合わせて進んでいきます。

メンタルヘルス不調による休職は、珍しいことではありません。厚生労働省の調査では、過去1年間にメンタルヘルス不調で1か月以上休業した、または退職した社員がいた事業所は、およそ8企業のうち、1企業で発生しています。

多くの企業は、休職の始まりにはそれなりにうまく対応しています。問題は復職です。厚生労働省の研究班によると、うつ病で休職した社員のほぼ半数が、5年以内に再び休職していました。その多くは、復職から2年以内です。しかも2回目の休職は、1回目より長くなる傾向があります。

T復職が早すぎる。
主治医は、患者に日常生活へ戻ってほしいと考えます。期限が迫っていれば、「復職可」の診断書を書く医師は少なくありません。ただ、その診断書が答えているのは、日常生活を送れるほど安定しているか、という問いだけです。この仕事、この通勤、この業務量に耐えられるかどうかには答えていません。それは別の判断であり、産業医と会社が下すものです。

原因が残っている。
戻った先に、同じ難しい顧客、同じ仕事の山、同じ目標が待っていれば、復職プランは形だけのものになります。休職につながった状況は、何も変わっていないからです。

支援が早く終わる。
最初の数週間は面談がありますが、本人が元気そうに見えると、次第に途切れていきます。しかし、最もリスクが高い期間は約2年続きます。多くの企業が注意を向けなくなった、ずっと後までです。

上司が変わる。
4月の人事異動で来た新しい上司は、復職プランがあることを知らされていません。残業が少しずつ戻っても、誰も気づきません。誰も見ていないからです。

休職前:管理職が気づき、つなげられるようにする

たいていの管理職は、兆候に気づいています。夜遅くに送られてくるメールが増える。報告が短くなる。会議を忘れる。残業は増えているのに、成果は落ちている。足りないのは、そのあと何をすればいいかという感覚です。管理職の役割は、気づいて、産業医や人事、相談窓口につなぐこと。診断することではありません。

実際に使える一言を用意しておきます。たとえば「最近ちょっと無理しているように見えるから、一度、産業医と話してみてもらえないかな。様子を聞くだけだから」。言葉を持っている管理職は、実際に声をかける可能性がずっと高くなります。

2028年4月からは、従業員50人未満の事業場にもストレスチェックが義務化されます。早い段階で問題に気づくきっかけになります。ただし、誰かが結果をもとに動けば、の話です。

休職の開始時

最初の1週間が、その後の流れを決めます。休職の規定と休職期間の上限、そして給与が止まることが多いため、健康保険の傷病手当金について説明します。傷病手当金の担当者は連絡窓口は一人に決めます。多くの場合は人事の担当者です。業務の引き継ぎはチームで行い、仕事の件で本人に連絡する人がいないようにします。取引先の件で上司が善意から送るメッセージは、最初の週にはまさに逆効果です。

休職中

連絡は定期的に、軽く、一人から。月1回程度が一般的です。調子はどうか、会社から必要なことはないかを尋ねます。いつ戻れるかは聞きません。

医療に関する情報は、本人の同意を得たうえで産業医を通し、職場が知るべきことだけに絞って受け取ります。人事に必要なのは病歴ではなく、復職が近づいているかどうかです。回復は一直線には進みません。ひと月調子が良くても悪くても、それだけではほとんど意味を持ちません。

復職できるかどうかの判断

「復職可」の診断書は、その日から復職の対象になる、という意味として扱います。その日の朝から出社する、という意味ではありません。最終的に判断するのは会社です。産業医が本人と面談し、意見書を出したうえで決めます。

役に立つシンプルな方法が、いくつかあります。数週間つけてもらう生活記録表を見れば、決まった時間に起き、一日を過ごせているかが分かります。厚生労働省の職場復帰支援の手引きにもある試し出勤は、正式な復職の前に、通勤と職場を試す機会になります。うつ病からの職場復帰を専門に支援する医療機関のリワークプログラムは、再休職を防ぐうえで確かな実績がありますが、勧めている人事部門はごくわずかです。

復職後の数か月

一般的なのは、元の職場に戻り、業務量を通常の7〜8割程度に抑え、最初の数か月は残業も出張もなしにするやり方です。チームには、本人が了承した範囲のことだけを伝えます。

そのうえで、原因に手をつけます。顧客なのか、業務量なのか、目標なのか、指揮命令系統なのか。何を変えるかを、誰かが決めなければなりません。何も変わらなければ、結果も同じになると考えておくべきです。

復職後の2年間

フォローアップは、つきっきりである必要はありません。ただし、続ける必要があります。効果的なのは、見直しの時期をあらかじめ決めておくことです。復職から1か月、3か月、6か月、12か月の時点で、人事と、可能であれば産業医も交えて短い面談を行い、2年目は軽めの確認にします。確認する内容は毎回同じ。勤務時間の制限が守られているか、業務量がいつの間にか戻っていないか、です。日程は、復職したその日にカレンダーに入れておきます。すべてが順調に見えるときでも、面談が行われるようにするためです。

上司が変わるときは、復職プランを引き継ぐ必要があります。これは異動の手続きに組み込んでおきます。放っておけば、引き継がれることはありません。

  • 産業医は診断書を見るだけでなく、本人と面談し、意見書を出しているか
  • 本人は少なくとも数週間、安定した生活リズムを保てているか
  • 休職につながった業務について、具体的に何が変わったのか
  • 勤務時間、残業、出張の制限はどうなっていて、いつ見直すのか
  • 誰が、どのくらいの頻度で、いつまで様子を確認するのか
  • 上司が変わった場合、誰がプランを引き継ぐのか

答えがあいまいなら、まだ復職の準備は整っていません。休職は、本人が戻った日に終わります。リスクは、そこでは終わりません。